SEVENTH DAY

2005年 7月26日

 

僕は、日付をまたぐ寸前に、散らばっているまだ何も書かれていない本を

拾いあげ、咄嗟に7月26日と書き殴っていた。

 

表紙のタイトルは「LAST DASH 2」

なんとも陳腐なネーミングセンスだが、時間が無かったので仕方が無い。

 

肇は、世界が終わらない事実に動揺している。

僕たちが日付をまたいでも消滅しないのは、物語の作り手側になった為か、

 

それともこの部屋の力か。それは分からないが、今はどちらでも良かった。

大切なのは、日付を跨いだ現時点で二人が生きているという事実だ。

 

「物語が生き続けるには作者と読者が必要なんだ!」僕は必死の思いで叫んだ。

 

「僕は幸いにして、多少なりとも物書きの経験が有る。

だから、物語の作者になりうることができる。」僕は叫んだ。

 

 

正直白状すると、これは上手くいくか分からない完全な賭けだった。

自分がこれからする事が正しいことかどうかも分からない上、

これから僕がしようとしていることは、根拠の無い全て僕の仮説だ。

 

「お前は一体何を言っているんだ!?」きょとんとした顔で肇は言った。

 

「お前がしようとしているのは―」肇が言おうとした言葉を僕が遮った。

 

「分かっている。もし僕が世界を作るという事は、もう一人の僕や君、

を作りだすということ。つまり、僕は元の世界の生活には戻れない」

 

「だけど、このまま白紙のまま世界を終わらせるのはあんまりだ!

だから君と僕とでこの物語を、いや僕らの世界を続けるんだ!」

 

「お前がしようとしているのは、ただたんに世界を

延命させようとしているだけだぞ!」肇は叫んだ。

 

肇の最後の日を覚悟した悟り切った態度がみるみる内に豹変していく。

 

「それでもいい。このまま白紙のまま終わらせるより良い。」

僕は言った。

 

 

「世界を作る。お前にはその意味が分かっているのか?」

 

「分かっている」僕は言った。

 

「物語を動かすためには、作者と読者が居るんだろ?」肇は言った。

「そうだ。調度いい事に、ここには二人居る。僕が作者で、肇、君が読者だ!」

 

肇も昔の調子が戻ってきたようで、毒説交じりの返事が返ってきた

「やれやれ、男同士でのアダムとイブ気取りなんて、反吐がでるけどな。

 

まあ、せっかくだし付き合ってやるよ」皮肉な顔でニヤリと笑った。

 

「僕らは死ぬまで書いて、読み続けなければならないこの意味が分かるね?」

肇に確認した。

 

「俺らが死んだ後は、物語は終わってしまうんだろ。それもちと寂しいな。」

 

「その時はその時さ。書き手と、読み手の役割のバトンを

代わってくれる人がいれば代わるし、そうでなければ、

こんどこそ本当の意味で物語を完結させてあげよう。」

 

「そうだな。中途半端は良くない」

 

「僕らが、創造主気取りなんて笑っちゃうけどね」僕は言った。

 

「まったくもって」肇は返した。

それでは、さっそく物語の続きを書くかね。

 

「それじゃ、早速こんな感じの文面でどうだい?」僕は言った。

 

 

              AFTER EPISODE

 

そして、僕は東京に戻った。

ちょっとした遠出の小旅行を体験して、少しは大きくなった感じだ。

 

季節も夏の終わりにさしかかり、少し肌寒さを覚える位になった。」

 

 

こんな感じの始め方でどうだ?

 

「悪くないね。まぁ、後で読んどくよ」肇はニヤリと笑いながら言った。