2000 7/24

fifth day

 

扉を開けると、そこには白いペンキ塗りの部屋が有った。

こうこうと光る蛍光灯が眩しい。

 

外の寒々しい外見とは違い、中の家具や、調度品は洗練されていた。

だけど、全く生活観の無い不思議な部屋だった。

 

 

無人だとは分かっていたが。念のため俺は「誰かいますかー」と声をはり上げる。

 

その後で、もうしわけついでに「おじゃまします」等とつけ加える。

 

反応が無いところをみると、今は誰もいないようだ。

 

 

とはいえ、不法侵入には違いないわけで、部屋に入るのには多少の気が咎めた。

 

そもそもは、誰もいない場所を想像していたわけだから、

電灯があるだけでも驚きだ。

 

その部屋には、冷蔵庫、キッチン、流し台といったように、

生活するのに必要な物は全て揃っていた。

 

それに、外観には全く不釣合いな程に、

ソファーや、テーブル等の家具は高級感が溢れていた。

 

冒険心から、冷蔵庫に手をかける。

冷蔵庫には清涼飲料水の類がずらりと並んでいる。

 

キンキンに冷えたコーラを一つ取り、一気飲みをする。

山道での疲れが嘘のように癒される。

法律的な意味で言えば、文句なしの犯罪だ。

 

 

飲んだ後に、賞味期限切れでお腹を壊したらまずいと、

さすがに製造年月日が気になったので、

 

缶の裏を見ると「050327」と印字されている。

おそらく、2005年3月27日ってことだろう。

 

明らかに未来の日付だ。

 

天下のコカ・コーラの首を取ったりとにやけながら、Kにいった。

 

「おいKみてみろよ!このコーラの製造年月日ミスプリされてるぜ!」

 

Kは無言でそれに手に取ると、しげしげと物珍しそうに缶の裏側を覗く。

 

「ふむふむ、確かに」Kは淡白に言った。

 

その淡白なコメントが面白くなかったことも

有って、そこら辺の物を物色する。

 

電気が通っているのは確かに以外では有ったが、それ以外は

特にこれといって特筆することは無かった。

 

自分としては、夏の休みの小冒険としてはこれで十分だった。

 

部屋もあらかた見終わったことも有り、恐らく二階の展望台

に通じているであろう、奥のドアに手を掛ける。

 

だが、その扉を開けても、不思議なことに上に昇るための階段は無かった。

代わりに、螺旋作りの下に降りる階段が有った。

 

Spiral staircase detail of the Eckmuhl lighthouse in Brittany, france

 

「おかしいなぁ。上に昇るための入り口ってここ位しかなさそうだぞ」

 

Kに聞こえる声で一人ごとを言った。

 

Kは淡白に「そうだね」と一言いったぎり口を開かなかった。

 

螺旋階段の、下に降りる道には少し不気味な

感じはあったが、それを好奇心が上回った。

 

俺とKは、黙々と螺旋階段をグルグルと歩いた。

 

しばらく歩いた先に、ドアが見つかった。

 

そのドアを開くと、そこはギッシリと本が置かれた、

ちょっとした図書館のような場所だった。

 

地下部屋の奥行きが想像以上に広いことにも驚かされた。

 

何のために作られた施設か分からなかったが、おそらく

何かの本を保存する為のところであろう、

位の認識で自分自身を納得させた。

 

 

机の上には格調を感じさせる一冊の本が置いてある。

題名は「LAST DUSH」

 

はおもむろに、その本に手を取ると、自然と手が進む。

Kは一心不乱に読み進める俺の姿を目を白黒させながら見ていた。

 

 

一心不乱に次のページ、次のページとめくる姿は鬼気迫る感じで。

Kは声をかけることができなかった。

 

俺は全てを読み終えた途端にまるで、電源のスイッチをOFFにした

かのように、パタリと意識を失った。

 

「おい!しっかりしろ肇!」Kは朦朧とした意識の俺の肩を担ぎ、

白い塔を背にし、一目散に山から降りた。

 

山から道路までがそれほど遠くなかったことも幸いして、

道路に出て、行き交う車を体を張って止めて、

俺を近場の病院まで連れて行った。

 

俺は、近場の病院に連れ込まれ。

三日間寝続けた後に、意識を取り戻した。

俺が家に引き篭もるようになったのはそれからだ。

 

そこで知ってしまったのだ。俺は。世界の全てを。